現存する16世紀頃に作られたとされる絵画と一体となった画枠を有する作品がある一方で、時と共に画枠から額縁という独立した形態へと変わっていった額縁と数々の名画との関係で、初期の形態と考えられる額縁と絵画がまさに一体になった作品も現存する中に見受けられます。例えば、ロンドンにあるナショナルギャラリー所蔵の18世紀に描かれたとされるHyacinthe Rigaud(イアサント・リゴー)作の「Antoine Pâris(アントワーヌ・パリスの肖像)」などはこの絵画にはこれしかないとまで思われそうな額縁が状態も良く残されています。以降19世紀の作ともなれば、現存する作品と共に額縁のついた作品も増えていきます。ところが、これらの額縁が必ずしも絵を描いた画家が納得してつけられたものではない場合が多いとも言われています。例えば展示のため主催者が適当に見繕ったと思われるものから、逆に個人コレクターが他の作品より目立たせるために敢えて豪華な額縁をつけたのではと勘繰りたくなるようなその絵に似つかわしくない額縁に収めている例など、挙げるときりがないほど数多く見受けられるからです。例えば、同じナショナルギャラリー所蔵のHenri-Joseph Harpignies作の「River and Hills(河と丘)」などは、のどかな風景画でありながらつけられている額縁は金粉処理の施されたまさにどちらが主役かわからない豪華な代物です。おそらく描いた本人が見たら怒り出すのではとも取れるミスマッチぶりで、額縁が一人歩きしていく中での弊害と言ってもいいかもしれません。