ハンコもまた美術品のひとつといえると思います。「脱ハンコ」などとしてスローガンを投げかける行政の動きが、このところ各メディアなどで数多く報道されておりますが、皆さんはこれまでの日本人の大きな社会的な活動のなかで大きな意味合いを持っていたハンコの存在について、今回の行政の働きかけをどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。社会人になって初めて自分の印鑑を両親や親族からプレゼントされた時のワクワク感を、まるで昨日のことのようにご記憶されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。在宅ワークやリモートワークが標準化されつつある世の中の動きの中で、脱ハンコ化が加速化していくことは致し方ないとは思われますが、これまでの社会のなかでの習慣や風習があっさり世の中からはじかれてしまう光景は、なんとなく寂しさが漂っていると感じずにはいられない筆者であります。最近では、脱ハンコ旋風の侘しさから、社会人デビューの当時、両親からプレゼントされた社会人記念の象徴でもあった印鑑を朱肉で和紙に押したものを、手持ちの額縁に入れてデスクの上に飾ってみたりもしております。